はじめに

 「弁護士なのに認知症対策?」と思われてこのサイトにたどり着かれた方も多いかもしれません。たしかに,弁護士は医師ではないので,認知症を予防したり,治療したりすることはできません。しかし,弁護士でも,法律上認められた方法を使って,将来認知症になってしまったときや,相続が発生したときに家族が困らないように対策を立てることは可能なのです。

 そのための対策法は,たくさんあるのでここではご紹介しきれませんので,目的ごとに,主な方法に絞ってご紹介させていただきます。

対策していないとどうなるの?

 民法は,意思能力(判断能力)が減少した人を保護するために,そのような状態となった人の行為能力というものを制限しています。そのため,認知症等により判断能力が減少してしまった場合は,本人であっても自分の財産を自由に処分することができなくなってしまうのです。

①認知症になったとき,家族が困らないようにしたい

 任意後見契約・民事信託・法人設立といった方法を活用することによって,認知症になってしまったとしても,自分が考えていたとおりの財産の管理・処分を行うことが可能となります。

 また,専門家の関与の下で財産管理を行うことで,「実はこっそり使い込んでいたのではないか」「あの人だけこっそりお金をもらっていたんじゃないか」等の相続トラブルを予防する効果も期待できます。

②遺産でもめることがないように事前に分け方を決めておきたい

 遺言書の作成や民事信託といった方法を活用することによって,法律で定められた遺産の分け方を変更することが可能となります。

 近年は,自筆証書遺言保管制度も整備されましたが,形式的な確認がなされるだけで,内容についてはアドバイスしてくれません。内容が確定した場合は,公正証書遺言等にしておくのが有効です。

③その他のあれこれ

A 自分が死んだ後のことをお願いしたい

 死後事務委任契約,遺言,民事信託といった方法を活用することによって,死後の事務処理を任せることができます。

 お葬式や預金口座の解約はもちろん,パソコンやスマートフォンといったデジタル機器を「初期化して処分して」といったオーダーも可能です。

B だれも欲しがらない不動産を処分したい

 これまで法律的に解決することは不可能でしたが,令和3年に「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律案」が可決されたことによって,処分できる余地ができてきました。実際に対策を行えるのは同法律案施行されてからになりますが,一緒に取り組んでみませんか?

C 会社の株を渡したいけど,元気なうちは自分が会社のことを決めていきたい

 拒否権付株式の発行や民事信託を活用することにより,議決権をとどめたまま株式を移転することが可能となります。

ぜひはやめのご相談を

 これまでご紹介した対策ができるのは,ご本人様が元気なうちだけで,ご本人様の判断能力が低下した後では,ご紹介した対策のほとんどが使えなくなってしまいます。

 保険と同じで,対策をするのが「遅すぎる」ということはありますが,対策をするのが「はやすぎる」ということはありません。ぜひおはやめにご相談ください。